十全大補湯で心身に活力を

東洋医学

 心身を元気づけてくれる処方がある、というところが漢方薬の素晴らしいところの一つですね。西洋薬で元気をつける薬なんて言えば、ステロイドという使い方の難しいお薬になってしまいます。元気づける漢方薬たちを総称して補剤と呼びます。胃腸を整え消化吸収機能を高めることにより、気という生命エネルギーを増やし、全身の栄養状態を改善し、また免疫機能をあげて体の抵抗力を回復させ、体調を整えてくれる、そんなの一群の漢方処方です。今日はその中の一つ、十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)についてお話ししてみます。

 保険適応は、「病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血」となっています。病後というのは病気と戦い回復していく過程で疲れ切った状態ですね。手術後や重症肺炎など大きな病気では体力の低下はかなりなものですから、そんな時に使うと良いということです。皮膚は汗の出具合を調節してくれています。体力の低下とともに皮膚の機能が落ちると汗をコントロールできなくなり、寝汗と言って、寝ているうちにじっとりと汗をかいてしまうことになります。

 元気がなくて、疲れやすくて、貧血気味で、お肌カサカサなどという訴えの方に使います。漢方の言葉で言えば、気血両虚という状態で、元気も栄養も低下している状態ですね。お腹を触ると軟弱で、脈も弱いことが多いです。手術を受けた後や大病の後に使うわけですが、癌化学療法や放射線治療などの副作用である、白血球減少、脱毛、骨髄抑制などに対しても軽減効果があるともされています。

 十全に大いに補うという名前から見ても何でもかんでも補ってくれそうですね。また10種類の生薬から構成されているという意味での十でもあります。気力がない(気虚)ときの基本処方四君子湯の人参、蒼朮、甘草、茯苓と、血が足りない(血虚)に対する基本処方の四物湯が一緒になった八陳湯に、黄耆と桂皮が加えられた処方です。桂皮は体を温め気を巡らせてくれます。黄耆は元気をつけて皮膚も強くしてくれます。ですから冷えや毛が抜けることが気になる方にも良いですね。気力も体力も補い、気の回りも良くし、肌も丈夫にしてくれるわけです。

 処方に含まれる地黄が時に胃に障ると言われています。でも胃腸の調子を整える生薬も含まれているためか、問題になることはあまりありません。全身的に機能も栄養も落ち貧血傾向な方などは試してみて良い処方だと思います。弱っているなと思われる人で、元気がないだけでなく、体力全般が落ちているなぁという人に使ってみると、元気が出て血色も良くなってくるかもしれません。

 漢方薬の面白いところは、丁度良いバランスに着地させる方向で働くというところです。元気をつけると言っても、やたらとハッスルするような状態にするわけではなく、弱っている人を良いところまで引き上げてくれます。元気な人に補剤を使っても効果は出ませんし、場合によっては体調を崩す可能性もありますから、使う相手を見てから使う必要があります。これは全ての漢方薬に言えることです。

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