癌かて笑って死ねるんや

医療

昔、「癌かて笑って死ねるんや」というドラマがありました。実際におられた大阪の医師が主人公で、癌末期の闘病記といった内容だったと記憶しています。このタイトルから見て想像できると思いますが、がんで死ぬときは、とても笑える状態などではなく、苦しみのなかで死にゆくものなのだ、というのが当たり前の時代だったのだと思います。

1990年頃から、ホスピスという言葉が徐々に認知されるようになりました。また、癌に伴う痛みその他の苦痛に対する対応方法も模索の中から開発され、今では多種の苦痛を取り除く方法論も作り上げられてきています。また、緩和ケア病棟、ホスピス、在宅緩和医療などの体制も整備されてきて、件のドラマの時代とは隔世の感があります。

それでも、死へ向かう過程においては、様々な工夫をしても取り除けない強い苦痛が出ることもあります。そんな時に検討するのが、苦痛緩和を目的とした鎮静です。お薬を使って鎮静を行うことによって、苦痛が軽減されることを目指しますが、十分な鎮静をしなければ苦痛を取り除けない場合には、意識もなくなり会話ができなくなることになります。ですから、鎮静を行う際には、患者自身とそのご家族とよく相談したうえで、鎮静を開始することになります。

もちろん、いったん始めたらやめられないというわけではありません。時間を区切って行ったり、続けて鎮静を行う際も薬の使用量をうまく調節して意識が残った状態で苦痛を軽くできることもあります。どうしても鎮静が必要となった場合は、患者、家族、医療者がよく相談して、どのような方針でやっていくかを相談しながら進めていく必要があります。

時に、鎮静と安楽死のイメージがダブってしまう方がおられます。でも目指すところが違います。安楽死は苦痛を取り除くために死を選ぶということです。一方鎮静は、苦痛を取り除いた状態で生きていることを目標としています。そこをきちっと認識しておくことが大切です。

癌は必ずしも死を意味する病気ではない、と言える時代を私たちは生きています。しかし、癌で亡くなる方が少なくないのが現実です。もし身近に癌闘病中の方がおられたり、ひょっとしてあなた自身が闘病中であるならば、緩和ケアの必要性をすぐに検討してください。必要なければそれでよいですし、必要なら適切なケアを取り入れて、よりよい毎日を送れるようにしましょう。ここでは鎮静のことを述べましたが、そこに至らなくても苦痛を取り除く手段はたくさんあります。希望を捨てずに、今日を生きてほしいと思います。

 

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