漢方に親しむ 「補中益気湯 41」

体調が下降気味でお疲れさんの方に処方するのが補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。消化機能を改善しながら元気をつけてくれます。飲んでいるうちに体調がよくなり、風邪をひかなくなったといわれる方もおられます。基本的には、虚弱傾向で、体力が衰え、倦怠感や食欲不振を訴えるような方に使いますが、いつも元気だけど最近疲れるなどというときにも使います。私なら、疲労回復にはドリンク剤よりこれを選びますね。

《保険適応病名》

消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症
夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症。

感冒は風邪の症状が強いときではなく、ひいた後の不調が長引いたりするときに使います。痔は脱出しやすかったり、力なく脱肛するときなどに使います。多汗は、体が熱くて汗をかくというより、皮膚の力が落ちていて、汗が漏れ出てくるというイメージでしょうか。それを何とかする目的で黄耆が含まれているようです。

《生薬構成記憶のための語呂合わせ》人参(にんじん)黄耆(おうぎ)蒼朮(そうじゅつ)当帰(とうき)柴胡(さいこ)甘草(かんぞう)大棗(たいそう)陳皮(ちんぴ)升麻(しょうま)生姜(しょうきょう)

***************

仁義術 当に最高 甘い棗とミカンは小魔境

補中益気湯は大切な処方で、医王湯(薬の王様)とも言われます。良い王様でしょうから、仁(人参)義(黄耆)にあつく様々な分野で術(蒼朮)も優れており、当(当帰)に最高(柴胡)です。でも甘(甘草)いものには目がなく、棗(大棗)やミカン(陳皮)を食べだすと止まらず、小魔(升麻)境(生姜)に迷い込んでしまいます。

※陳皮:温州ミカンの皮を乾燥させたもの

コメント

  1. […] 元気を出してもらいたいというとき思いつくのは、補中益気湯です。これは普段元気でも疲れたというときに、何服か飲んでも効果が感じられることがあります。これを普段から服用していると、虚弱な人が風邪をひきにくくなるという印象があります。 […]

  2. […] 六君子湯で効果が今一つだなぁという時は、体全体をもっと元気づけてくれる補中益気湯を試してみるのもよいと思います。これもお腹の中から元気づけてくれる代表選手です。 […]

  3. […] ◎日常生活で疲れを感じることは多いと思います。倦怠感が続く方や普段は元気だけどここの所休む暇もなくて疲れたという方など、一度補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を試してみてください。頓服として使っても効果があることがあります。疲れが抜けないという時はしばらく継続的に服用していると、疲れに伴う他の症状まで改善することがあります。 ◎補中益気湯を使う目標として昔から言われているのは、手足がだるくて動かすのが億劫、しゃべり方に元気がなく声が小さい、眼力が乏しくなんだかトロっとしている、口の端に白く泡のように唾がたまっている、味覚が落ちて食事がおいしくない、暖かいものを好む、臍のあたりに動悸を触れる、 脈を触れると勢いがないなどです。とにかく疲れというキーワードで試してみて良い処方だと思います。 ◎補中益気湯で効果が実感できないときや、貧血傾向があるような時には十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)がよいかもしれません。皮膚の乾燥傾向があるような時もよいでしょう。 ◎漢方薬には体にたまって多すぎるものは体の外に出す(瀉す)、足りないものは補うという考え方があります。元気をつける処方は補ってあげるもので、補剤と総称されます。補剤には、上記2剤以外にも、人参養栄湯、六君子湯、八味地黄丸その他があります。気長に服用しているうちに、疲れても回復が早くなった、活動性が高くなった、風邪をひきにくくなったなど体全体の調子を良くしてくれることがあります。 ◎漢方薬はお薬ですが、食事の延長という面もあります。足りないものを補ってあげて、限られた人生を、一日でも多く元気に送っていきたいですね。 […]

  4. […] 痔の漢方薬の代表選手は乙字湯。これは製薬会社によって大黄の量が異なるので、患者さんの便通の状態によって会社を変えたりしている。肛門括約筋が緩んでいて脱出傾向があるような人には補中益気湯が良いことがある。出血が主訴の方なら芎帰膠艾湯を合わせて出したりする。血の循環を良くしていぼ痔を良くしたほうがよさそうだというときには、桂枝茯苓丸、当帰建中湯、通導散その他から選択する。 […]

  5. […] 今年も酷暑の予想が出ています。体感的にも数十年前の夏より暑さが厳しいと思う方が多いのではないでしょうか。貝原益軒は、四季の中で夏が最も注意深く養生する必要があると述べています。暑さから逃れようと、クーラーに長くあたったり、冷たいものを多く飲食したりは避ける必要があります。逆に温かいものを食べて、消化管を温めてあげたほうが太陽維持には望ましいと思います。 夏バテといえば、体がだるくなり、疲れが取れないといことがあると思います。このような時には、補中益気湯、清暑益気湯などをまず試すことになります。食欲低下が目立つようなら六君子湯が第一選択でしょうか。消化管を整え、元気をつけることを目標とします。 クーラーにやられたというときには、五積散。上半身より下半身の冷えが強く、腰痛や胃腸の調子が悪くなったりするときに使います。麻黄附子細辛湯や当帰四逆加呉茱萸生姜湯なども選択肢に挙がってきます。 夏の暑さで体調を崩した場合も、どのような体質の人がどのような状況でどういう症状を訴えているかによって、選択する処方は変わってきます。必ずしも代表的な処方でうまくいくとは限らないのが、漢方薬治療のむつかしいところであり、面白いところです。患者と医師が協力してその人に合った処方を見つけていく必要があります。 […]